富士胶片(中国)投資有限公司

SAP® ERPを活用して業務改革を行い「オペレーショナルエクセレンス」を実現

発展著しい中国市場において、イメージングソリューション、インフォメーションソリューションを展開する富士胶片(中国)投資有限公司。
事業を拡充しつつ発展してきた過程の中で、各事業部の業務プロセスが統一されておらず、結果として全社最適化の面で課題を抱えていた。
課題の根本解決に向け、アビームコンサルティングの方法論を採用。組織、業務、ITの3面からアプローチする方法論の活用により、業務の効率化、意思決定の迅速化、人材の有効活用という「オペレーショナルエクセレンス」が実現された。

「頭の中でモヤモヤしていたものがうまく引き出され、無駄のない進め方と社内の多くの関係者が納得する形で最適な方法論で業務プロセスと組織の改革を実現できました。」

富士フイルム中国 中国ITセンター所長
辻 健司氏
  • 課題
    • 業務の効率化:社内の情報伝達が紙媒体で行われており、各事業部での重複作業や手作業も存在
    • 意思決定の迅速化:業務がシステムに即時反映されず、データ分析が後手に回っている状態
    • 人材異動の容易化:事業部での属人的な固有業務が多く人材ローテーションが困難(属人化)
  • ソリューション
    • 業務の効率化:業務機能の再配置・集約化
      - 事業部共通であり、量も多い業務を集約
      - 処理する部門(商務運営部)を設立
    • 意思決定の迅速化:データ更新タイミングの適正化
      - 業務実態とシステム処理(タイミング)を同期させるプロセスを徹底
    • 人材異動の容易化:業務を標準化させる施策の推進
      - 人が代わっても同じ業務が行なわれるプロセス・ルール・IT機能の整備
  • 効果
    • 業務の効率化:業務機能の再配置・集約化、標準機能の活用と作業自動化により、作業効率と情報伝達効率を大幅に向上(750時間/月)
    • 意思決定の迅速化:データ発生時点での入力により分析が可能となる情報活用基盤を構築
    • 人材異動の容易化:業務の標準化より、円滑に人材ローテーションが可能な状態を実現

Story

プロジェクトの背景

導入したSAP ERPのポテンシャルを引き出せていない

1934年の創業以来、「映像と情報」の分野で社会に貢献してきた富士フイルムホールディングス株式会社(以下、富士フイルムホールディングス)。同社は「第二の創業」と位置づけ、写真フィルムをコアビジネスとする企業から、新たな複数の事業で成長を続ける企業への転換をグループ全体で推進。イメージングソリューション、インフォメーションソリューション、ドキュメントソリューションという、3つの柱で事業を展開している。富士フイルムホールディングスでは、第二次世界大戦前の1938年から、東南アジアを中心とした輸出を積極的に展開。1956年には輸出部を設置すると共に、海外拠点を拡充し、さらに輸出を拡大。1990年代には、中国各地に生産工場も展開。
 また2001年より急速に成長する中国マーケットでのトップポジションを獲得すべく、富士フイルムグループの中国におけるビジネスの統括と投資・販売を担っているのが富士胶片(中国)投資有限公司(以下、富士フイルム中国)である。
 2016年現在、富士フイルム中国が注力しているのは医療事業とイメージング事業である。特にインスタントカメラ「チェキ」が、中国の若者にも大人気となっている。2015年6月には、上海の人民広場前にチェキやデジタルカメラなどを取り扱う「ワンダーフォトショップ」もオープンした。富士フイルム中国 中国ITセンター所長の辻健司氏は、「基本的には日本と同じ商品を中国市場で販売していますが、日本のレントゲンがほぼデジタル化されているのに対し、中国ではまだフイルムが多く残っているといった違いはあります」と語っている。

富士フイルムグループでは、販売や在庫管理、購買管理といったサプライチェーンの業務において標準プロセスが定義されており、グローバルの各拠点にも展開されている。しかし、富士フイルム中国では、多くの日系企業が直面する中国固有の問題が引き金となり、標準業務が徹底されていなかった。中国固有の問題とは、人材流動の高さと人員交代時の引継ぎ不足である。人の入れ替わりの度に新担当者は自身の効率を高める努力をし、生産性を上げようとした。それは、業務が徐々に属人化することと同義でもあった。結果として、属人化した業務が全社の効率を下げ、個別基準で入力した定義の異なるデータが上位者の意思決定を遅らせ、個別に調整された業務が人事異動の障壁を高める、という状態に陥っていた。

 辻氏は、「日本では、世界各国の拠点のSAP ERPデータを取り込んで、需給管理をしようと考えていました。しかし、その運用の前提となるデータが、中国からは正確に抽出できないという課題がありました。4年半前に中国に赴任してきたときから、こうした課題をどこかの段階で一気に解決したいと考えていました」と話している。

アビームの選定理由

SAP ERPへの高い知見と在中 日系企業での業務改革の推進力を評価

「業務の効率化」、「意思決定の迅速化」、および「人材異動の容易化」の3つを達成すべく、富士フイルム中国では、2014年初めから対策の検討を開始した。協力依頼を出した3社から提案を受けた。内容を比較検討した結果、アビームコンサルティング(以下、アビーム)を採用することにした。
アビームの選定理由を、富士フイルム中国 業務改革推進部 部長 兼 中国ITセンター副所長の郭斌氏は、次のように語る。
 「SAP ERPの知見が豊富で、インダストリーフレームワークを活用することで、中国でも短期間での業務改革が期待できました。また、システムを有効活用しながら業務を改革し、“オペレーショナルエクセレンス”を実現するための方法論が確立されており、この実現性が高いと感じたことが、アビームを選定した最大の理由です」

 辻氏も、「プロジェクトの担当者が日本人で中国語も堪能なので、現場との円滑なコミュニケーションが期待できることも評価しました。また業務プロセスの改善だけでなく、定着化プロセスを継続して実施することを提案してくれたことも高く評価しました」と話す。

■課題と解決策・効果

プロジェクトを推進する上での課題

中国 現地法人での業務プロセスの問題をどのように全て洗い出すか

業務プロセスの改善に際して、個別に不十分なポイントは分かっていた。しかし、個別事象に対して個別対処を行うのでは、富士フイルム中国が抱える問題の抜本的解決はできない。「なぜそのようなオペレーションとなっているのか」をシステム機能やプロセスだけでなく、業務ルールや組織構造も含めて多面的に把握・分析し、真因を突き詰める。その上で抜本的な対応策を打つことが必要だった。この一連の取り組みをどの進めるべきか。アプローチの検討から、プロジェクトは始まった。
 辻氏は、「全社的な業務プロセスの問題を如何に発見し、どうアプローチするかを明確にすることがプロジェクトの第一歩でした」と当時を振り返る。
当時の富士フイルム中国が持つ問題意識を、郭氏は次のように語る。「当時SAP ERPは財務諸表の出力ツールになってしまっていました。日々の業務は紙で情報伝達し、業務処理後にSAP ERPにデータを手入力している状況でした。これは情報化ではなく、単なる電子化でしかありません。本来の導入目的であった業務改革を行うためのシステムとして、SAP ERPを再定義することが必要でした」

既に導入されているSAP ERPのポテンシャルを十二分に引き出して現場の業務を変革し、効率化するだけでなく、経営情報の見える化・事実に基づく意思決定ができるようにする。そうすることで、初めて導入したシステム投資対効果の“刈り取り”ができる。これを実現するために活用されたのが、組織・業務・ITの総合的な観点から業務改革を推進するアビームの方法論である。

課題の解決策

3 STEPで業務改革プロジェクトを推進

業務改革プロジェクトは、大きく3ステップで実施。フェーズ1では、2014年10月より約3カ月をかけて問題・原因の抽出と改革方針の検討を行った。次にフェーズ2として、2015年1月より約5カ月で、パイロット事業部門の改革方針に基づく業務プロセス・組織・システムの設計、導入、定着化までを実施。
フェーズ3では、2015年5月より約5カ月をかけて、全ての事業部門への横展開を実施した。

具体的な改革は、プロジェクト開始時にメンバー全員で「業務の発生部門でシステム処理を行う」という原則を合意することから始まった。その上で、業務プロセスを機能に分解、分解した機能を原則に照らして実際の部門へ再配置、配置に合わせて部門の役割と組織体制を見直した。結果、業務改革のために組織変更が必要であるとの結論に達した。各事業部の営業支援業務から共通業務を切り出し、集中処理を行う専門部門(商務運営部)の新設が必要という結論である。

この新設部門を前提に、業務の標準化と効率化もプロセス・ルール・ITの面から推し進めた。
標準化に向けては、事業部共通の業務プロセスを整備しつつ、ルールも改定した。発注登録、数量・納期の更新タイミングという基本はもちろん、サンプル品購買やフイルム裁断処理など、業務シーンごとに使用するSAP機能もルール化した。
その一方で、効率化のためにITによる自動化を促進。SAP ERPを再活用し、価格の自動提案・入荷指示の一括登録などによりシステム操作時間を削減した。さらに、グループウェア活用により、紙のワークフローを撤廃することで、情報伝達効率を向上させた。
また、現場教育も徹底した。施策の説明、業務シミュレーション、開始後の定期連絡会などを重ねることで、新業務を浸透させていった。

辻氏は、「フェーズ1では、業務プロセスのどこに問題と原因があるのか、この業務改革の目的は何かをアビームとともに明確にしました。フェーズ2では、2つの事業部をパイロットとして業務改革を実施しました。この実績を生かし、フェーズ3で全ての事業部に新しい標準業務を横展開しています」と話している。

■実施の具体策 - 発注の例 -

導入効果と今後の展望

業務工数を1カ月あたり750時間削減。より一層のデータの見える化を目指す

現場担当者を悩ます手戻り・重複作業の撲滅、部門間連携の円滑化などの効果が現れ、業務工数は
1カ月あたり750時間削減された。

辻氏は、「以前は、紙の伝票による情報伝達だったので、現場の意思決定に非常に時間がかかっていました。新しい業務プロセスでは、作業負荷の低減とともに、部門間での情報伝達効率が大幅に向上しています。また、グループウェアでの情報共有により、取引先との請求書以外、社内の紙伝票を全て廃止することができました」と話す。

プロジェクトの3つの目的は達成された。
1つ目の目的「業務効率」には、業務集約化が大きな貢献をしている。以前、受注から入金、出荷指示、出荷までの業務プロセスは各事業部内で個別に実施していた。しかし、受注後の処理は、契約執行のみであるため、難しい判断は必要なく、処理自体も事業部間で大差ない。そのため、前述の「全事業部の入金から出荷までの各業務を集約的に処理する部門」(商務運営部)を設立、業務集約を行った。その結果、各事業部の定型作業負荷が軽減され、事業部が本来の業務に振り向けられる「余力」が生まれている。

2つ目の目的「意思決定の迅速化」はデータが発生時点で入力されることで改善した。伝票の登録、修正がルール通りに実施され、業務の実態がタイムリーにシステムに反映されるようになった。これにより、データが管理・経営の意思決定に活用できる状態が実現した。

3つ目の目的「人材異動の容易化」については、郭氏は、次のように語る。「以前の業務プロセスは個人の裁量の幅が大きく、そのため業務が属人化し、人の異動も困難でした。新しいプロセスは、標準化・集約化されており、誰が担当になっても同じ業務が実行される仕組みになっています」


現在、富士フイルム中国では、標準業務プロセスが、再び属人化に向かわないよう、一層の定着化を推進している。辻氏は、「今後は、標準業務プロセスを正しく運用し、磨き上げていくことが重要になります」と語る。
また今後は、富士フイルム中国において品質が向上したデータを有効活用し、経営・管理の意思決定によりいっそう寄与することを計画している。辻氏は、「BIシステムを使って、PSI(Procurement、Sales、Inventory)や日々の売り上げなどの情報をリアルタイムに分析することを検討しています」と話している。

「頭の中でモヤモヤしていたものがうまく引き出され、無駄のない進め方と社内の多くの関係者が納得する形で最適な方法論で業務プロセスと組織の改革を実現できました。
今後、BIシステムによるデータの見える化が実現できればプロジェクトは一段落するので、別の業務課題に関しても支援を期待しています」

富士フイルム中国 中国ITセンター所長
辻 健司氏

「アビームが提案してくれた業務改革のための方法論やプロジェクトの進め方、成果物の作成方法などには、今後のプロジェクトでも活用できるアイデアがたくさんありました。今後のプロジェクト推進でもサポートを期待しています」

富士フイルム中国 業務改革推進部 部長 兼 中国ITセンター副所長
郭 斌氏

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