日本電気株式会社

「会社の財布は1つ」という理念で調達を個別最適から全体最適へ
継続的なコスト削減と調達プロセスの高度化で経営改革を推進

ICTやインテグレーション力を生かし、世界中の顧客に新たな価値を提供し、未来の創造を目指す日本電気株式会社(以下、NEC)と調達部門に精通した豊富な実績とあるべき姿を実現する実行力が高く評価されるアビームコンサルティング株式会社(以下、アビームコンサルティング)。
両社のキーマンが、経営改革の一環としてNECが取り組んでいる、継続的なコスト削減と調達プロセスの高度化を進める取組みについて熱く語った。

  • 課題
    • 調達時に適正な価格、仕様、委託先を判断する基準が属人的
    • 部門間で調達プロセスやルールにバラツキ
    • 調達後にサプライヤの情報が全社で共有されていない
  • ソリューション
    • ユーザー部門と調達部門の協働による調達プロセスの策定
    • 調達時のユーザー負荷を抑える先進ツールの導入
    • 調達情報の全社共有による情報資産の活用
  • 効果
    • ユーザー部門の自律的にコスト削減を可能にする調達PDCAサイクル確立
    • 他の外部調達コストやグローバルへの展開による更なるコスト削減の拡大
    • ユーザビリティを高めたツール導入による速やかな定着化

Story

プロジェクトの背景

会社から出ていくお金のすべてを適正に管理するための仕組みと組織を確立する

安部 今回、実施した「業務委託契約の適正化プロジェクト(以下、プロジェクト)」の一環で調達部門の名称を「資材」から「調達」に変更されました。プロジェクト開始以前の資材部門において、どのような課題があり、どのような背景で調達本部に名称を変更し、プロジェクトを開始するに至ったのでしょう。

大嶽 NECに入社以来、長く資材調達業務に従事してきましたが、資材部員に「NECはメーカーである」という意識が強く、資材部という名称が、要求部門の要望に基づいて必要な資材を購入する組織という限定的な意識を生んできたように思います。

しかし10年以上前に、外資系メーカーの購買部門責任者をお招きした社内セミナーで、「我々の仕事は、会社から出ていくお金のすべてを最適に管理することだ」と話されているのを聞き、改めて自分たちの仕事を振り返り、できていないことが多いと感じました。

そこで執行役員になった年に、組織名称を「資材」から「調達」に変更し、会社から出ていくお金のすべてを適正に管理するための仕組みや組織作りをスタートしました。

安部 日本の企業は「ものづくり」への思いが強く、資材部や調達部はサプライチェーンの一部という認識で、できるだけ安く、欠品のないように部品を購入することが求められます。しかしこうした状況は、時代とともに変化しつつありますね。

大嶽 おっしゃるとおりです。会社の責任論でいえば、資材部の責任範囲を自らが決め、全社の経費管理は主管部門任せという状況でした。また、できるだけ安く購入できればよいという考え方が社内の主流的な価値観だったことも問題の1つでした。

しかし、会社にとって安価な購入が最善というわけではありません。品質が大切なのは言うまでもありませんが、いかに効率的かつ効果的にお金を使うかが重要なのです。プロジェクト開始以前は、これだけお金を使うのであれば、どれだけの効果を出さなければならないかという意識が希薄でした。

安部 今回のプロジェクトは、業務委託費を適正化するということが原点にありますが、そこに着目した背景や思いはどのようなものだったのでしょう。

大嶽 業務委託やコンサルティングのような調達は、調達部門の専門性だけでは最適な結果を生まないので、業務委託費の使い方を各部門の良識に任せてきました。これでは不十分という意識があったので、経費マネジメント活動の第二段階として着手しました。

安部 商品であれば、品番や型番で単価が明確ですが、業務委託費のような単価が明確でないものに関しては、仕様を明確に定義できません。そのため各部門の決定に対し、調達部門が介入しにくい状況にありました。また、年間の予算内であれば、どれだけ使っても構わないという部門最適のブラックボックス化のような状況も問題ですね。

大嶽 調達契約する際、(1)仕様、(2)価格、(3)納期、(4)数量、(5)取引先の5つの要素を意識せねばなりません。一般的なハード調達においては、仕様、納期、数量が、MRP(資材所要量計画)により自動的に決まるので、購買部門は価格と取引先の決定にエネルギーを注いできました。その結果、要求部門と調達仕様を議論するという意識が希薄になっていました。

今回のプロジェクトは、調達部門と要求部門が一緒になって、調達仕様を検討し、決めることを目的としています。これにより、最適な価格と取引先を導き出すことが可能になります。重要なのに取り組めなかった領域に踏み込み、調達部門の意識と行動を変え、それを要求部門にも周知徹底するプロジェクトでした。

アビームの選定理由

経費マネジメント推進室の立ち上げ実績や間接材コスト削減に対する豊富な知見を評価

安部 プロジェクトを推進するパートナーとして、アビームコンサルティングを選んだ理由を聞かせていただけますか。

大嶽 2012年に執行役員に就任した直後から、経費マネジメントの改革活動に着手しました。その第一弾として、2012年9月から「間接材購買コストの削減プロジェクト」に取り組み、2013年4月には「経費マネジメント推進室」を立ち上げました。

その時もアビームコンサルティングにお世話になっていました。今回のプロジェクトをスタートするにあたり、プロジェクトメンバーとともに、アビーム以外のコンサルティング会社も比較・検討の対象にしましたが、結果的に、アビームを採用することにしました。

アビームコンサルティングを採用したのは、「間接材購買コストの削減」や「経費マネジメント推進室の立ち上げ」の際、パートナーとして緊密に連携、行動して頂き、我々の想定を超える実績を残して頂いたことを評価したからですが、間接材関連のコスト削減に対する豊富な知見、方法論などを持っている点も魅力でした。

アビームは前回NECの一連の取組みにおける間接材コスト削減および経費マネジメント推進室の立ち上げを支援しています

プロジェクトを推進する上での課題

調達部門が介在することへの不信感の払拭と「会社の財布は1つである」ことの啓蒙

安部 プロジェクトを推進していく上で、最も難しかったのはどのような点でしょう。

大嶽 これまでは要求部門が自分たちで検討し、発注先を決めていたのですが、調達部門が介在するプロセスを標準にしました。このことによる不信感の払拭が最大の課題でした。しかし、全てのプロセスを要求部門に任せると、契約(発注)先との間に貸し借り関係ができ、厳しいことが言えなくなることもあります。そうした際に、全社視点で正しい方向に導いていくのが調達部門の役割だと思っています。そこで、調達部門と要求部門が一緒に取り組むというアプローチを推進しました。お互いがそれぞれの役割を理解できれば、最適な調達に近づくことができます。

安部 確かに、要求部門は発注先との関係もあり、ほかに安くて良い発注先があっても、簡単に変更することができません。そこで調達部門が会社の盾になって最適な発注先を要求部門と一緒に検討する仕組みを構築しようと考えたのは素晴らしいことだと思います。

大嶽 また、各部門の年間予算が、各部門に割り当てられるので、「自部門の財布は自由に使っていい」という部分最適文化があったことも課題でした。そこで、私自身がプロジェクトの先頭に立って、「会社の財布は1つである」ということを訴え、要求部門を啓蒙してきました。これを辛抱強く続けることで、個別最適の予算遂行から全体最適の予算遂行への変革を目指しました。

課題の解決策と導入効果

仕様、価格、委託先の3つの視点を踏まえた調達PDCAサイクルを確立

安部 プロジェクトを推進する上での課題をどのように解決されたのでしょう。

大嶽 まずは仕様、価格、委託先の3つの視点を踏まえた基本的なRFP(提案依頼書)を作成し、複数の発注先から提案をもらい、要求部門と調達部門が一緒になって検討し、最適な発注先を選定、その情報を蓄積して次の調達に生かすという一連のPDCAサイクルを確立し、それを実装するための取り組みを推進しました。

今回のプロジェクトでは、業務委託やコンサルティング業務の領域まで各部門の財布を横串で管理し、会社全体の財布として最適化できることを示すことが最大のポイントです。各要求部門が主管部門と連携して発注先を決め、調達部門がプロセス、考え方、価格水準を管理する仕組みを構築する方向を目指しました。

各品目の価格が世間一般の価格とギャップがないかを監視することが経費マネジメント推進室を立ち上げた最大の目的でしたが、大きな支出に関しては管理が徹底され、価格は適正化された状況になり、当初の目的は達成されつつあります。

次のステップとしては、調達量の適正化が必要になると考えています。量の適正化は、どうすれば外部リソースを使わずに済ますのではなく、どうすれば外部リソースの投入が最適化されるかということです。これは、経営マネジメントとの両輪だと思っています。

これまでは、数十部門が活用した外部リソースのノウハウが、活用した経験のある部門でしか使えませんでしたが、NECグループ全体で共有できるようになれば、グループ全体で新たな契約に対する全体最適を実現できます。

安部 今回のプロジェクトに対するアビームコンサルティングの評価はいかがでしょう。

大嶽 アビームコンサルティングは、ユーザーの立場で、もっとも実現可能なプロセスを提案してくれました。また、それに対しNECのメンバーが意見を言いながら、そのまま受け入れるもの、修正するものを、コミュニケーションしながら折り合いをつけてくれたことが大きなポイントでした。お互いにプロジェクトを成功させようという思いで、過去の経験や知見を共有してもらえたことを高く評価しています。

今後の展望

継続的なコスト削減と顧客価値の最大化が「ものことづくり」の新しい尺度

安部 現在、第4次産業革命の時代と言われていますが、日本の製造業は、ほとんどがソリューションビジネスに移行しています。NECグループも、もの売りからソリューションビジネスへの変革を目指しているのでしょうか。

大嶽 現在、「ものづくりの時代」から「ものことづくりの時代」へと移り変わっていますが、売れている「もの」は、必ず「こと」が意識されています。「こと」とは、お客様の利用シーンであり、お客様の困りごとを解決できる「もの」、お客様の求める価値を提供できる「もの」でなければ売れません。

このとき、どれだけコスト削減ができるかではなく、どれだけお客さまへの提供価値を最大化できるかが重要です。ものづくりの時代はコスト削減重視でよかったのですが、ものことづくりの時代では、社内のリソースと社外のリソースを組み合わせ、継続的にコストを削減しながらお客様の価値を最大化する取り組みを調達部門が推進していくことが重要だと思っています。

安部 これまでの調達部門や資材部門は、これを作りたい、あれを売りたいという要望にあわせ、言われたものを仕入れることが仕事でした。これまでの他社におけるコンサルティングの経験から強く思うのは、サプライチェーンの一部としての調達から、お客様の立場に向けた調達に変革していかなければならない時期に来ていると思います。

お客様がこういうものを求めているのだから、こっちのほうがより良いというアドバイスを調達部門が生産部門や営業部門に提案できるようになれば、会社をより一層強くできます。そのまとめ役が、調達部門には求められています。

大嶽 進むべき方向は分かっていても、人の行動を変えることはなかなか困難です。しかし、それだけ改善余地があることは大きな楽しみでもあります。NECが顧客価値を念頭に置いて、絶えず変革を推進できるようになれば、更に飛躍していくでしょう。今回のプロジェクトを発端として、自分たちが変わらなければならない、もっと外の世界を見なければならないという認識が各部門の改善エネルギーになっています。

安部 「変革する」という思いは大事だと思います。NECのプロジェクトは、今後の日本全体の調達のあり方に対する大きなインパクトがあります。これが、今後の日本企業が第4次産業革命を乗り切るための鍵の1つになると信じています。NECには、是非、けん引役として改革を推進してほしいと思っています。最期にアビームコンサルティングに対する期待をお聞かせください。

大嶽 今後、調達部門のリーダーが様々な変革を推進していくためのスキルセットを明確にしたいと考えています。日本の一般的な調達部門にはその道一筋の人が多く、自分の過去の経験だけで組織をリードしたり、戦略方針を立案したりしがちです。しかし必要なのは、会社全体最適の視点で支出の妥当性を理解し、組織全体を課題克服へ導く能力です。

アビームコンサルティングには、調達部門のリーダー達に求められるスキルセットの体系化や、同じ思いの人が集まるコミュニティの創設を期待しています。コミュニティにおける議論から、スキルセットや方向感、志のようなものを整理できれば、非常に有効になります。こうした取り組みは、一企業では困難です。

アビームコンサルティングのような会社が触媒となり、問題を提起し、その問題の解決法を整理してほしいと思っています。そこで得られた方向感は、企業秘密ではなく、すべての企業が生き残っていくために必要なリテラシーです。その点を理解し、進めるか、進めないかを決める力が、今後の企業の真の実力になっていくでしょう。

プロジェクトメンバー 左からアビーム 金弘、安部、NEC 大嶽氏、川島氏、アビーム 小松

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