好侍食品(中国)投資有限公司

「カレーライスを中国の国民食にする。」という目標を掲げて中国事業を拡大
業務の共通化と見える化を指向したSCM業務改革プロジェクトを推進

ハウス食品グループの中国拠点である好侍食品(中国)投資有限公司は、中国国内における食品の製造・販売事業およびレストラン事業などを統括している。特にカレールーやレトルトカレーを中心とした商品の普及に注力してきた結果、いまでは中国の家庭にも日本式カレーは着実に浸透し、国民食へと発展しつつある。売上高も年間20%超の成長を継続中だ。

その一方、販売・物流業務の急激な拡大と変化が進行し、“オペレーションの共通化”と“業務の見える化”を実現するシステム基盤の整備が急務となった。そうした中で立ち上がった「SCM基幹業務改革プロジェクト」を、アビームコンサルティングがワンストップで提供した「需給テンプレート」と「ABeam Cloud」で支援した。

  • 課題
    • 年間20%超の売上成長を継続していく中、販売業務の急激な拡大と多様化が進行
    • 業務の共通化・見える化、およびシステム基盤の整備が急務
    • 販売機会損失や在庫過多などのコスト増加の抑制のため、販売予測精度の向上が必要
    • 中国におけるIT人材が少なく、運用を含むIT投資コストの抑制が必要
  • ソリューション
    • 需給テンプレート
    • ABeam Cloud
  • 効果
    • 業務オペレーションのシステム化
    • 販売/在庫情報の一元化
    • アラート起点の需給調整業務の確立
    • マスターの一元管理によるデータ精度の向上

Story

プロジェクトの背景

業務に必須のデータが整備されていない切実な課題がSCM基盤構築のフックに

中野 ハウス食品様の中国拠点における「ABeam Cloud」を活用したSCM基幹業務改革プロジェクトでは大変お世話になりました。実績系と計画系の2つのSCM基幹業務のシステム化を同時に、さらに2015年11月から2016年3月までの実質4カ月で実施するという非常にチャレンジングな取り組みでしたが、無事に新しい仕組みでの業務を開始することができ、アビームコンサルティングとしても安堵しています。

中島 こちらこそ大変お世話になり、ありがとうございました。

葛山 そのSCM基盤も稼働開始から約半年が過ぎ、本日は改めてプロジェクト全般を振り返らせていただけたらと思っています。まずは、なぜ新たなSCM基盤が必要だったのか、そもそもの課題からお聞かせください。

中島 ハウス食品は「カレーライスを中国の国民食にする。」という事業目標を掲げ、2005年から中国でのカレールーの製造を開始しました。中国のお客様がスパイスとして、あるいは漢方として重宝している八角を使用するなど、現地の嗜好に合わせた味づくりにもこだわってきました。その結果、まだまだ十分とは言えないまでも、中国の消費者にカレーは着実に浸透してきたと思っています。

中野 順調なグローバルビジネスの展開ぶりですね。

中島 そう見えますよね。しかし、こちらに赴任した当初は愕然とすることの連続でした。なにしろ製造、販売、在庫、物流などの業務で必須であるはずのデータが、ほとんど整備されていなかったのです。せっかく大連に二拠点目の工場を作ったにもかかわらず、お客様に効率良く製品をお届けできないという問題に直面しました。

中野 具体的にはどんなことに苦労されたのでしょうか。

中島 中国は国土が広いですから、北(大連)で作った製品は北で、南(上海)で作った製品は南で販売するというのが、物流や商流の観点からも効率的であるのは言うまでもありません。ところが実際には、販売や在庫に関する情報のコントロールがうまくできていなく、北で作った製品を南で売る、南で作った製品を北で売るという非効率なオペレーションが頻発していたのです。

さらに言うと、価格戦略上の問題もありました。弊社は地域や取引先に応じて価格設定を変えていますが、例えばある地域において本来なら発生するはずのない価格で販売されているといった事象も頻発していました。

中野 ハウス食品がこれまで苦労して中国で築いてきた、市場のポジションそのものも揺るがしかねない重大な問題ですね。

中島 おっしゃるとおりです。しかも、そのイレギュラーな製品が、どこから、どういうルートで流れてきたのかもトレースできない状況にありました。

葛山 とはいえ、従来も販売や物流などの基幹業務を担うシステムがまったくなかったわけではありませんよね。

中島 もちろんです、紙のやりとりや口頭の指示だけでは業務を動かすことができませんから。ただ、それなりのシステムは導入されていても、拠点ごとに分断された状況にありました。例えば販売拠点は北京と上海の両都市にありますが、それぞれ異なるシステムが導入されており、データレベルでの連携はありませんでした。営業担当者もExcelなどのツールを使って、それぞれで販売データを管理していました。
こういう状況を脱却し、マスター系の情報を統合されたシステムのもと、全社共通のルールで管理・統制できるようにしたいと考えました。

葛山 まさに、そうしたPain(切実な課題)が今回のSCM基盤構築のフックになったわけですね。

中島 そのとおりです。

■ 本プロジェクトの背景と目的

年間20%超の売上成長の実現を目標に掲げ、販売業務の急激な拡大、変化・多様化が進行しており、業務の共通化・見える化、及びシステム基盤の整備が急務だった。また、販売機会損失や、在庫過多などのコスト増加の抑制のため、販売予測精度の向上も求められていた。

アビームの選定理由

お互いがお互いのやり方を理解するアビームには気心の知れた信頼感があった

葛山 さまざまな課題を一体となって解決していく“リアルパートナー”として、今回のSCM基幹業務改革プロジェクトではアビームコンサルティングを選定していただいたわけですが、どんな点をご評価いただけたのでしょうか。

中島 冒頭で中野さんからもお話があったとおり、私たちは「実績系と計画系の2つの基幹業務の改善を兼ね備えたシステムであること」という要望をRFP(提案依頼書)の段階から盛り込みました。端的に言えば、この両方の要件をしっかり満たす提案を行ってくれたのがアビームコンサルティングでした。数社から提案があったのですが、他社の提案は実績系か計画系のどちらかに偏りがありました。アビームコンサルティングの提案内容は非常にバランスが取れていたと思います。
もうひとつの大きなポイントは、ハウス食品の日本本社における会計業務改善(ERP導入)プロジェクトや内部統制強化プロジェクトに、アビームコンサルティングが一緒に取り組んできたという実績です。

中野 私も葛山も、その節は大変お世話になりました。

中島 こちらこそ、あらゆる局面で助けていただきました。こうして考えると、両社の付き合いは相当な年月になりますね。今回のSCM基幹業務改革プロジェクトでは、そうした「お互いがお互いのやり方をよくわかっている」という安心感がありました。初めてのベンダーと組んだプロジェクトには常に不安がつきまといます。日本国内でさえそうなのですから、中国でやるとなるとなおさらです。
その意味でも気心の知れた間柄にあり、ハウス食品のビジネスや理念も熟知しているという前提があるのは、非常に心強いポイントです。特に今回は、できる限り短期間でプロジェクトを完了したいという思いが強く、やはりパートナーはアビームコンサルティングをおいて他にないという結論に至りました。

中野 ありがとうございます。私や葛山もこうしてアビームコンサルティグ(上海)に異動することになり、再び中島様をはじめハウス食品の方々と一緒にお仕事をさせていただく機会を得ることができました。偶然の要素も大きいと思いますが、それも実績に裏づけられた信頼があってこそだと考えると、大変光栄に思います。

■ プロジェクトマスタスケジュール

業務設計・システム設計から開発テストまで実質4 ヶ月のスケジュールだったこともあり、SCM 業務領域への基幹システム導入プロジェクトにしては、チャレンジングなスケジュールだった。

中島 ただ本音も明かしますと、中国に赴任してきた当初は「もう絶対にシステム構築プロジェクトだけはやるまい」と心に誓っていました。先のSAPの導入プロジェクトでの経験はとても貴重なものでしたが、やはり苦労も多かったです。そもそも私の本職は財務で、システムは畑違いと感じることもあります。

葛山 それでも、やはりご自身が旗を振らねばと思われたわけですね。

中島 新規市場の開拓を目指して海外拠点に赴任した経験のある方ならおわかりいただけると思いますが、国内ほど万全な体制が整っているわけではなく、一人で何役もこなさなければなりませんので。

葛山 中島様は現在、どんなお仕事を兼務されているのですか。

中島 肩書は管理本部の本部長となっていますが、財務、人事、総務、法務、そしてシステムのすべてですね。もちろん、これこそがグローバルビジネスの醍醐味であり、大きなやりがいも感じています。とはいえ、あちらこちらにあまりにも課題が多すぎて、一人では受け止め切れません。そんなときに何でも相談ができる相手というのは非常にありがたいのです。アビームコンサルティングは、まさにそういう存在です。

課題の解決策

実績系業務から先行しビジネス現場への定着を図る

葛山 身に余るお話をいただき恐縮ですが、ここで話題を少し変えて、アビームコンサルティングが提供したソリューションについてお話を伺えればと思います。今回、SCM基盤を早期に構築するためにABeam Cloudをご提案し、実際に活用していただきました。

中島 そうですね。RFPの中にも、クラウドは前提条件の1つとして盛り込んでいました。
狙いとしてあったのは、まず初期コストを抑えることです。また上海の拠点にはITの専任者が1人しかいないので、システムの運用管理やメンテナンスといった作業を抱え込みたくないとも考えました。
加えて中国はまだまだ通信事情が悪く、途中で回線が切れたり、シャットダウンされたりしてしまう場合もあります。やはりそこはVPNで使える堅牢なバックボーンを有し、データもきちんと保護してくれるクラウドに任せたいと考えました。とにかく「身軽にシステムを利用したい」という思いが強くありました。

葛山 実際、ABeam Cloudを使ってみた印象はいかがですか。

中島 社内にサーバを置かなくてよいというのは、やはりインパクトが大きかったです。ただ正直、管理コストがもう少し安くならないかなとは思いましたが(笑)。データセンターの使用量が相当大きいのはよくわかっていますし、強固なセキュリティ対策など、コストに見合う付加価値を提供いただけていることで納得はしています。

葛山 今回のSCM基幹業務改革プロジェクトのもうひとつ大きなポイントとして、アビームコンサルティングでは「ABeam Cloud上で需給テンプレートを活用し、計画系業務の短期間でのシステム化を実現する」「実績系業務についても需給テンプレートで追加システム開発を行い、オペレーションの共通化、業務の見える化を行う」という2つの基本方針を掲げて臨みました。これについても、ぜひご評価いただけると幸いです。

中野 少し補足しますと、需給テンプレートとはこれまでアビームコンサルティングが多くの企業の需給改革を支援する中で培ったノウハウをまとめたもので、「属人的な需給業務を標準化/省力化したい」「月次から週次計画へ転換したい」「精度の高い出荷計画をつくりたい」「計画を自動連動し、生産計画に繋げたい」「センター供給計画を日次で自動立案したい」「生産材の情報を関連部門で見える化したい」「将来の滞留見込みを事前に把握したい」「KPIを見える化し、PDCA を回したい」「予防型在庫監視をしたい」といった課題を短期で解決します。食品業界におけるベストプラクティスも豊富に含まれており、ハウス食品のビジネスに少しでも貢献できればと願っています。

■ 本プロジェクトにおける ABeam 需給テンプレートでの実現ポイント

中島 もちろん、アビームコンサルティングの親身な提案内容は、ハウス食品としても非常にありがたく受け止めています。ただ率直なところ、計画系業務で成果が見えるようになるにはまだしばらく時間がかかりそうです。というのも、ハウス食品の中国ビジネスは現在も急速な拡大期にあり、過去の経験値がどこまで通用するか、まだ実感できていません。
例えば私が赴任してきた当時は40名程度しかいなかった営業担当者が、現在は2倍以上に拡大しています。これだけでも販売力がまったく違ってきます。どんなキャンペーンを展開したかによっても、月ごとの売上は大きく変動します。在庫予測に関しても、まだ十分なデータが蓄積されていない段階ですので、これから2~3年後を見据え、じっくり腰を据えて取り組んでいこうと思っています。

その意味でいま注力しているのは、実績系業務の部分です。現時点の在庫がどこに、どれくらいあるのか、賞味期限は?、生産拠点は?、というようなことを正確に把握できるようにする。そこからどこに製品を出荷したのか、きちんとトレースできるようにする。さらに代金請求までの社内の業務プロセスを効率化するといった基本を、しっかり押さえようとしています。

導入効果

各部門の主要メンバーが自発的に集まり業務プロセスの改善を議論し始めた

■ 販売SCM システム導入後のシステム全体像

葛山 まずは実績系業務の改善に力点を置いて取り組まれているとのことですね。システムが稼働してからまだ数カ月ですが、何か手応えは掴めたでしょうか。

中島 システムが稼働開始してから最初の1~2カ月くらいは、ネットワークの障害や不慣れなオペレーションなどによるいくつかのトラブルに悩まされたのは事実です。

ただし3カ月目を過ぎたあたりから、ネットワークもオペレーションも安定するようになり、それとともに社員からの評価も急上昇しています。受注業務を担当している現地社員からは「新しいSCMシステムはすごくいい!上海オフィスと北京オフィスの間の情報のやりとりも非常にスムーズになった」というメールが届きました。また倉庫で在庫管理や仕分けを担当している現地社員からも、「仕事が短時間で片づけられるようになった。Excelや手書きの帳票で在庫を管理していた頃と比べ、データを入力すればすぐにSCMシステムに反映され、レポートのアウトプットまで自動的に行われる。問い合わせを受けた商品の確認もすぐに行えるようになり、とても便利になった」という報告を受けています。

どれも当たり前のことと言われればそれまでですが、こうした現場の声が実際に届くとうれしいものです。先にも申しましたように、社内の業務プロセスの効率化は今回のSCM基幹業務改革プロジェクトの大きな目標のひとつであり、その意味でも着実に成果は表れ始めていると言えます。

中野 稼動当初にトラブルが発生したことは、私たちのサポート不足もあったと反省すべきポイントですが、結果としてシステムは着実にビジネス現場へ根づき始めているようで本当に良かったです。業務が改善されたことで、一人ひとりの社員の皆様の意識が変わったという面もありますか。

中島 確かに、それはありますね。仕事を短時間で片づけられるようになったこともあるのですが、各部門の主要メンバーが自発的に集まるようになりました。これまでは自分の担当外の仕事には興味がないという感じだったので、劇的な変わりようです。そして、どうすればお互いの連携をもっとスムーズにとれるか、業務フローをもっと短縮できるかといったことを話し合っています。チームワークは格段に向上しました。

結局、人間は何もないところから発想はできません。SCMシステムができたことで、全社的な業務プロセスの中で、自分の担当業務がどういう意味を持っているのかが初めて見えるようになり、さまざまな“気づき”の材料になっているようです。

今後の展望

システムを動かす人の教育こそが今後に向けた最大の課題

葛山 少し気の早い話かもしれませんが、そうした成果を踏まえつつ、SCMシステムを今後どのように発展させていきたいとお考えですか。

中島 ハウス食品のような食品メーカーにとって、やはり販売・物流はさまざまなシステムの中でも最もコアになる部分だと思っています。実際、上海と大連に続いて浙江省でも新しい工場の建設に着手しようとしており、そうなると今後は、その3工場でどういった生産の振り分けを行うのか、どういったルートで物流を行うのが効率的なのかといった判断がますます重要となります。その意味でも先手を打って、SCMシステムの構築を進めてきたことは本当に良かったと思います。そうした中で今後に向けては、先に申しましたSCMシステムのもうひとつの核心である計画系業務の改善、ひいては在庫予測や需要予測の精度向上に臨んでいきたいと考えています。

ただし、システムはあくまでもシステムであり、それを動かすのは人です。情報もすべて人が起点となって生まれます。そうしたことを考えたとき、人にどういったトレーニングをし、システムとどのように融合させていくのかが、今後の大きな課題となります。

■ 販売予測の精度向上:システムによる需要予測ロジック

過去実績には大口の販促企画情報が含まれるため、精度の高い需要予測を算出するためには、過去実績から販促企画情報を分離(異常値修正)することが重要。また、直近の上昇/ 下降傾向(トレンド性)や季節周期性を考慮した予測値算出が可能。

中野 システムにはどんどん情報・データが蓄積されていくわけですから、自ずと分析や予測は可能となります。ただ、それをビジネスで有効活用するには、基本的な「仮説と検証」のアプローチと、さらなる活用が必要になってきます。これからの時代は、このような感度を持った人材を育成することが大切ですね。

中島 おっしゃるとおりです。これまでは右肩上がりで販売が伸びていたので、営業部門の意見がほぼ全面的に通ってきました。生産量を絞った結果、もしも欠品を出したりすると営業部門から叩かれるので、いつも余裕を見て作り、在庫を持っておこうという方向に思考が傾いているのがいまの実態です。しかし近年は、さすがの中国経済にも停滞感が見え始めており、これまでのように商品が売れ続けるとは限りません。営業部門が出してきた数字を科学的かつ客観的に見極めながら、生産や在庫、物流をコントロールしていかなければなりません。その基盤としてSCMシステムがあり、より効果的な活用を模索していく必要があります。アビームコンサルティングのさらに手厚いサポートを期待するところです。

中野 承知いたしました。私たちも誠心誠意でお応えしていきます。

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