宮丸 正人

宮丸 正人

戦略ビジネスユニット長
執行役員 プリンシパル

デジタル時代の競争優位の源泉は
「バリューチェーンイノベーション」の習熟にあり

 デジタル化がもたらすイノベーションにいま世間の注目が集まるのはなぜでしょうか?
 それは、企業がこれまで創り上げてきた価値創造の仕組み(=ビジネスモデル)や顧客に価値を届ける仕組み(=バリューチェーン)そのものに対して、デジタル化の波が変革を迫っているからです。本格的なデジタル時代が到来したいまこそ、日本企業には「バリューチェーンイノベーション(価値連鎖の変革)」を繰り返す力が求められています。
 デジタル時代の競争優位の源泉となる「バリューチェーン(価値連鎖)」の「イノベーション(変革)」について、アビームコンサルティングの宮丸正人が語ります。

価値共創の仕組みを変革し続ける企業が
“Game Change by Digital Innovation”を牽引

 英タイムズ紙による「世界で最も影響力のあるビジネス思想家」の第1位に選ばれたこともある故C.K.プラハラード氏は、ミシガン大学ビジネススクールの同僚であったM.S.クリシュナン氏とともに2009年に発刊した著書『イノベーションの新時代』(原題:The New Age of Innovation)の中で、次のように記しています。

 「いま消費者が求めているのは“商品”ではない。ひとりひとりの顧客に合わせた“経験”であり、企業と価値を“共創”することだ。そしてこの要求に応えるために、企業は社内外および国境を超えて存在するグローバルな資源を利用し、“顧客”の要求に応えなければならない――。デジタル化、通信環境の整備、グローバル化がもたらした大変革は、“商品”の意味と価値創造のあり方、そして企業の存在価値を激変させた。この大潮流は、これまでの人材マネジメント、製品開発、価格設定、物流、マーケティング、ブランド・マネジメント、経営者やマネージャーの仕事のやり方と発想に改革を求めている」

 デジタル化とグローバル化の進展が、企業のイノベーションへの挑戦に大きな変化をもたらすことをプラハラードはいまから7年前の時点で見事に予言していたのです。そして2016年のいま、本格化するイノベーションの新時代に日本企業が目指すべきは、顧客と価値を“共創”する仕組みづくりをリードする企業になること、私たちはこれこそがデジタル時代の覇者になる成功要因と考えています。
 この顧客と価値を共創する仕組みづくりをリードするために、私たちは古くて新しいフレームワークである「バリューチェーン(価値連鎖)」に着目しています。デジタルテクノロジーを活用して、バリューチェーンのイノベーションを繰り返す力を備えた企業が“Game Change by Digital Innovation”を牽引し、イノベーションの新時代に競争優位を獲得するのです。

 では、デジタルテクノロジーを活用して「バリューチェーンイノベーション(価値連鎖の変革)」を繰り返す企業とは、どのようなケーパビリティを備えているのでしょうか? デジタルテクノロジーに精通していることは言うまでもなく必要条件ですが、十分条件ではありません。
 ここからは、バリューチェーンイノベーションを繰り返す企業に求められる3つのケーパビリティについて紹介します。

求められる3つの能力
バリューチェーンを「創る」「拡げる」「磨く」

 デジタル時代にバリューチェーンイノベーションを繰り返す企業が備えるべきケーパビリティとして、アビームコンサルティングでは次に挙げる「3つの力」に注目しています。

 1つ目は、バリューチェーンを「創る力」です。スタートアップ企業のように素早くビジネスモデルを描き、新たなバリューチェーンを構築する力はもちろんのこと、大企業にとっては既存のバリューチェーンを分解して素早く再構成する能力も「創る力」に該当します。顧客の「Jobs(重要性)」「Pains(深刻さ)」「Gains(必要性)」 を確実に捉えて、その解決策を経験価値として効果的に届ける新たな仕組みを「リーン」に創出する力が求められます。

 2つ目は、バリューチェーンを「拡げる力」です。顧客に届ける価値を最大化するために、業界・業種の垣根も国境も越えて他社と共創する環境を拡げる力です。これまで日本企業が構築してきた系列やサプライチェーンのような閉じた環境ではなく、「オープン」なエコシステムを最大限に活用することで、バリューチェーン上で共創する価値を拡大する力が求められます。またM&Aやベンチャー投資などをうまく活用して、バリューチェーンを不連続に成長させることも「拡げる力」の重要な要素と言えるでしょう。

 そして3つ目は、バリューチェーンを「磨く力」です。バリューチェーン上のプロセスをE2Eで可視化することによってビジネスプロセス変革(=BPR)を繰り返す力はもちろんのこと、デジタルテクノロジーを活用して経験価値のバージョンアップやブラッシュアップを「アジャイル」に繰り返す力が、バリューチェーンを「磨く力」です。

 これら「創る」「拡げる」「磨く」の3つの能力に習熟した企業は、「リーン」に、「オープン」に、そして「アジャイル」に、バリューチェーンを通じたイノベーションを繰り返すことが可能となるのです。今回の「ABeam Consulting の視点」において採り上げる「リーンスタートアップ2.0」「デジタルマーケティング」「人口知能(AI)」「FinTech」「製造業のサービス化」は、いずれもが顧客に経験価値を届ける仕組みの変革を実現する手法です。
そして、デジタル時代のバリューチェーンを「創る」「拡げる」「磨く」のいずれかを実現する有効な手段といえるでしょう。

社内外の人材を結集した「チーム」が
バリューチェーンイノベーションを牽引する

 バリューチェーンイノベーションの「創る」「拡げる」「磨く」という3つの能力に習熟することは、日本企業にとってデジタル時代を牽引する原動力となりますが、これらの能力をすべて内製化できる企業は限られています。繰り返しイノベーションを起こす有能な人材(=シリアルイノベーター)を自社内で育成するという試みは大変重要ですが、バリューチェーンイノベーションを一人の専門家に委ねることは現実的ではありません。

 アビームコンサルティングはこの問題に対する現実的な解として、社内外の人材を結集した「チーム」を組成することを推奨しています。例えば新規ビジネスのインキュベーション経験を抱負に有する人材、M&Aを含む投資やパートナリングの実績を持つ人材、BPRに代表されるビジネスプロセス変革やオペレーション変革に長けた人材に加えて、アジャイルなシステム開発のスキルを持った人材などを社内外から集めて「バリューチェーンイノベーターチーム」を組成するのです。こうしたチームを通じてバリューチェーンイノベーションに取り組むことで、競争優位を素早く繰り返し獲得することが可能となるだけでなく、副次的に他社との共創を生むカルチャーや基盤も醸成されます。

 アビームコンサルティングのコンサルタントは、このデジタル時代にお客様の「バリューチェーンイノベーターチーム」の一員になることを心がけています。そしてデジタル時代のバリューチェーンイノベーションをお客様と共創する「リアルパートナー」として、日系グローバル企業をこれからも支援してまいります。

  • 宮丸 正人

    宮丸 正人

    専門分野
    • 経営財務と財務戦略
    • 中期戦略の立案
    • 金融業界
    実施プロジェクト
    • 東証一部上場企業のTOBによる子会社化
    • 大手金融会社の中期経営計画策定
    • 事業再編、事業再生案件多数